水泳とシューマン、そして呼吸のこと

大学生の頃、シューマンの「3つのロマンス」を勉強していた時のことです。
美しいメロディーとはうらはらに、休符もなく休みもなく、それは苦しい曲で、私はその問題と格闘していました。
私は、先生にききました。
「どうしたら、シューマンの3つのロマンスが楽に吹けるようになりますか」
先生はこうこたえてくれました。
「水泳をしたらいいよ、1000メートルを3本ぐらいかな」
それ以上のことは教えてくれませんでした。
私は小さいころからスイミングスクールに通っていて泳ぐことは得意でしたので先生の言われる通りに平泳ぎで1000メートル、それを3本泳ぎました。もうずいぶんと昔のことですので、そのトレーニングをどれぐらい続けたのか、その結果、シューマンの3つのロマンスの演奏にどのような変化がおきたのか、残念ながら記憶がさだかではありません。ただ、泳いでいる間、自分の呼吸にとても集中していたことははっきりと覚えています。1000メートルという距離を泳いでいる間、私は自分の呼吸と自分の体の中に起こっていることにだけ意識を集中していました。そして水泳の息つぎというのは、しっかりと息を吐き切ってその後肺に新鮮な空気を入れることが大事になります。そうしないとアップアップで苦しくなりますし、水でも飲んでしまったらたまりません。このように息つぎをうまくコントロールするというのがとても大切なのですね。

オーボエの演奏に話を戻しましょう。
オーボエを演奏するにあたって、とても大事なことは「余った息をじゅうぶんに吐ききる」ことです。この事は息を吸うことよりも大事になります。なぜならば、私たちはふだんの生活の中で息は普通に吸いますが、「体の中に余った空気」を吐き出すという事は意識して行なっていないからです。そして、オーボエのリードはとても小さく、開きもほんの少しです。その中に向かって私たちが吹き込む息の量というのは、実はそれほど多くありません。「少ない息だけどスピードがあって焦点が定まっている」この息のテクニックを可能にするには肺の中に余分な汚い息がたまっていてはうまくできません。
「オーボエは息が余ってしまう楽器」なのです。
そこで息をじゅうぶんに吐き出すテクニックが必要になります。
水泳を長距離泳ぐときは、フォームのテクニックも大事ですが息をじゅうぶんに吐いて瞬時に新鮮な息を取り込むこともとても大事になります。
ここで水泳とオーボエがつながりました。このことをきっかけに、私は息というものに注目するようになりました。先生は、このことを私に教えてくれようとしてくださったのかもしれません。オーボエは、呼吸のコントロールがとても大切な楽器なのですね。

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