3つの「L」Luft! laut! und los!

私が学生の頃、師匠はレッスンの時はいつもオーボエを吹いてくださいました。その大きな体格の師匠が吹くオーボエ の響きは、特に第2オクターブキイを使う音あたりなど太陽のようにキラキラ輝いていて、まるでパバロッティみたいだなあと私はいつも思っていました。きっとクラスのみんなも、どうやったらあのキラキラした響きが出てくるんだろう、と師匠が吹く様子を見てどうにかしてコツをつかみたいと思っていたことでしょう。

師匠はレッスンの時はいつも初めは部屋の一番後ろに立って私たちの演奏を聴いていました。上手くできる時は良いのですが、自分の演奏が上手くいかない時や思い通りにいかない時は、部屋の一番後ろに立っている恩師の姿は山のようで、それはなかなかに大きくて険しい存在に見えたものでした。そのような時は、大抵ビビっているので地に足もつかず、息も引っ込んでしまっていました。そうなると上手くいくものもいきません。
そんな時、よく言われていたのが「Masako! Drei L!!! (まさこ!3つのLだ!)」です。

3つの「L」とはLuft = 息

laut = 大きな(音で)

los =  さあ!行こう!(という感じです)という意味になります。

どれも安定した、しっかりとした演奏には欠かせない要素ですね。
「息」は何度もお話ししているように管楽器を演奏する私たちにとって最も大事な要素です。息の流れを止めてしまったら苦しいだけになり演奏も崩壊していきます。息の流れをスムーズに、楽器の先までさらにその先まで意識して吹く、そういった事を込めて言われていたと思います。
「大きく」とは緊張して縮こまっている自分のエネルギーをもっと外に出せるようにかけてくれていた言葉だと思います。自分が教える側の立場になってさらによくわかった事なのですが、「小さくまとまったものから大きくしていき広げていく事は、大きすぎるもの広がりすぎているものをまとめる事よりずっと難しい」という事です。具体的に説明しますと、『全体的にまとまっているし綺麗なんだけど、小ぢんまりとしていまいち訴えるものが見えない』ことと『すごくやりたい事がわかるけど、ちょっとオーバーかな』この二つの状態を比べると、大きすぎる、オーバーすぎる方をアドバイスして具合よくする方がやりやすいという事です。
「さあ!行こう!」というのはこれらをまとめて前向きなエネルギーを持たせようと言われていた言葉だと思います。思い切って前に出て進もうという感じでしょうか。短い言葉でわかりやすい、今も私の中に鮮明に残っている師匠の言葉です。


私の尊敬する師匠は、時々突拍子もないことを考えて実行していました。大学のコンサートホールを借りて、自分は客席の一番後ろに座って、私たちに舞台上で何調のスケールを吹く!自分はここで聴いているからここまで届く音で吹きなさい!と。

その時は、えー!!舞台の上で誰もいない客席に向かってスケールを超フォルテで!?なんで!!などと思いつつ客席の一番後ろに届くように、師匠が「聞こえないぞーー!」と言われればもっと大きく吹いていました。なんともはや、いろいろなレッスンを受けたものですが、後になってホールで演奏する時は客席の一番後ろに特に意識を持っていくようになりましたし、音が遠くまで届くというのがどういう事なのかわかってもきたのでした。
その時はなんでこんな事?なんの意味があるの?とわからないこともあるかもしれませんが、時が経ち、こういう事だったのか、こうすればああなるのか、と思えそれまでチグハグだったパズルがうまくはまっていくように色々なことがわかって機能していけばとても嬉しいですし、そして自分が人に伝えるようになってきて、いつか私の言っていたことを思い出してくれて実践してみようと思ってもらえれば良いな、と今は思います。


今日もありがとうございました。

Viel Spass und Freude am musizieren!音楽に楽しみと喜びを★(2019年12月23日)

コメントを残す