【オーボエ】嬉しかったレッスン

昨日、とある高校の吹奏楽部を訪れてきました。私のリードを届ける事とそれに付随して少しレッスンをするためです。数日前に地元の交流センターでロビーコンサートに出演したのですが、その時もその子たちは聴きに来てくれて最前列で一生懸命耳を傾けてくれていました。やはり何かを伝える場合、それがレッスンであるなら、何よりもまず自分の演奏を聴いてもらうのが一番手っ取り早い、良いタイミングだったと思います。

演奏が終わってオーボエの子たちが来てくれました。目をキラキラさせていて興奮している様子で数日後に彼女らのいる高校を訪れるのが楽しみになりました。そして昨日、時間としては決して長くなかったのですが、とても楽しくて嬉しい時間を過ごして来ました。彼女たちの素直で一生懸命で好奇心に溢れた姿勢というのは、きっと顧問の先生のよい影響なのだろうと思いました。リードを試して修正する必要もほぼ無く彼女らからの質問に付随して私が伝えられる事。リードが吹きやすくなるとオーボエの演奏もとても楽しくなります。そして彼女らは一生懸命に耳を開いて神経と感覚を研ぎ澄まして私の言うことを実践してくれようとしました。

彼女らのひたむきな姿勢と楽しそうに演奏する、こちらの言う事を試してみようとする、そして目に見えてその効果が現れて自分たちも嬉しい、リードが吹きやすいとこんなに楽しいんだ、と言っているのを見ると来て良かったな、私の方こそありがとう、と思わずにはいられませんでした。せっかく二人いるのだから一緒にできる和音構成とピッタリとはまった音程を感じる練習、アンブシュアの強化とその必要性、G.P.Telemannの二つのオーボエのためのソナタ(デュエット)を吹いてみよう、具体的にはそのような事を伝えて、彼女たちは本当に楽しそうに嬉しそうに演奏していました。そして思ったことがあります。ここ最近、SNS上で言われている「吹奏楽部のありかた」「クラシックとかけ離れた」「基本的知識を知らない」と言った批判的な意見。確かにそうかもしれません。私が伺った吹奏楽部の子たちは幸運なことに素晴らしい顧問に恵まれ色々と伝えやすかったのかもしれません。けれど、その場にいて色々と実践していく中で私にとっては「オーボエの有名なプレーヤーは」とか「最低限これは知ってないと」という事はそれほど重要ではありませんでした。大切なのは、「いかにして演奏が楽になって楽しく出来るか」「そのための大きなポイントであるリードを個々に合わせて調整する」「良い響き、ピッタリとハモった時の感覚を知る」「理論だけではなく、どう考えたらこのメロディは美しく流れるか、そしてそれがわかったらどう言う仕組みでそうなるのか、更にそれを実現するために何をどう心がけるのか」を伝えるいう事でした。理論から入るのではなく、まずは私自身が表現して納得してもらって次に相手にもこんなやり方で実践してみてもらい実感してもらう、上手くいかなかったら別の方法で、上手くいったらその時の感覚をしっかりと記憶してもらい、日々のトレーニングに活かしてもらう。まずは自分たちが演奏自体が楽しくなって、上手くできたという経験をしてもらってそこから「理論的な、専門的な」話へ進めば良いではないか、まずはオーボエの魅力と可能性を実感してもらう、自分の演奏能力を成長させるためには、納得と感動と意欲が絶対に必要です。そしてそれらを感じてもらうようにお手伝いするのが私の役割だと思っています。

かつて学んでいた高校の吹奏楽部で尊敬していた顧問の先生がいらっしゃいました。定年まであと一年というタイミングで実際には一年間しか習うことが無かったのですが今でも鮮明に記憶している事があります。モーツァルトの「フィガロの結婚」序曲を先生がタクトを取り振り始める瞬間のことです。先生は指揮棒を使われていませんでした。全員の神経が先生の指先に集まります。最初のスタートを担当するクラリネットとファゴットはいつでも始められる体勢です。そして先生の右手の人差し指の先がわずかに上下に「3・4」と動き「レドレドレ♫〜」と軽やかにスタートを切ったのです。そこから始まった序曲は、優雅でどこまでも軽快でそして羽ばたいていました。私はその瞬間を鮮明に覚えています。「吹奏楽でこの純クラシックがこんなに素敵に演奏できるんだ、凄すぎる」こんな素敵な体験が出来たらどんなに素晴らしいか、お伺いした高校の吹奏楽部を後にしながらふと思い出したのでした。

人というのは、何気ないことでもそれが本人にとって大きな衝撃であればあるほど鮮明に記憶しているものなのですね。今日伺ったオーボエの子たちも、素晴らしい顧問の先生と心強い仲間たちとそんな素敵な思い出を沢山作っていって欲しいと思ったのでした。

今日もありがとうございます。

Viel Spaß und Freude am musizieren! 音楽に楽しみと喜びを★(2020年2月5日)

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