【リード・ワンポイント】①抽象的よりも具体的に

ドイツの音楽大学でリードレッスンをしてきた中で、私は本当に多くのことを学びました。そこから得た知識、ノウハウ、特に完成リードを手直しする時の様々なポイントについて、少しずつですがこの場でお話ししていこうと思います。その前に、まだ学生だった頃、リードに関して大きく考え方が変わった経験をお聞きください。今日のテーマです。

ある日のレッスンで、私は師匠に「このリードの音色は十分に暗いですか?」と聞きました。良い音色かどうか、という意味です。師匠は言われました。「Masako, リードに関して音色が良いかどうか、それは一番注目する点ではない」私は、また何か変なことを口走ったのかと焦りましたが、師匠はおだやかに教えてくれました。「リードが良いかどうかを判断するポイントは、音が良いかどうかではない。それは次にいうポイントが達成されたら自然についてくる現象だ」そして「そのポイントとは、機能なんだよ。音程、振動、抵抗感、発音。これらの機能が達成されたら、その人が自然な状態で吹ける良いリードとなる。それはその人の音であり、響きとなる。結果、それが良い音のリード、となるんだ。だから人によって良い音というのは違う。重要なのは、抽象的な表現ではなく、物理的、具体的な機能に注目することだ。」

音程、振動、抵抗感、発音。

良いリードというのは良い音がします。良い響きがします。聴こえてくる音なのでそう感じるのは当然です。ですが、それが一番大事な目的として考えると、機能を無視してしまいがちになります。響きはいいけれど、音程がおかしい、暗い音だけれど発音が難しい。これでは結局、自由な演奏は長く続きません。例えばハインツ・ホリガー氏の演奏を例に挙げてみましょう。明るい、ダイレクトな響きだと最初は思いますが、慣れてくると非常にコントロールされた、美しい息の伸びとフレーズ感、均一なタンギングと華やかな響きに圧倒されます。次の例は、とても暗くて柔らかい音です。しかし音程が不安定で、発音もしにくそうです。そのうちに苦しそうに演奏自体が聴こえてきます。どちらが安心して聴ける演奏かどうかは一目瞭然ですね。響きや音色にこだわるあまり、機能に注目しなくなるのは、自分自身の自由でのびやかな演奏、つまりあなた自身の「自由で美しいのびのびとした響き」をつかむことができなくなってしまいます。

これが、師匠から教わったことで、その後私がリードに関してまず注目するポイントとなった出来事でした。リードを完成させていく中で、私が最も大事にしていること、注目していることは、

音程、振動、抵抗感、発音。

これらの機能を徹底的に突き詰めていきます。そのあとは要望に応じた細かい作業へと繋がっていきます。これから何回シリーズになるかははっきりとは分かりませんが、完成リード、または皆さんがご自分で仕上げたリード、そのリードたちがもう少し上手く機能するようにはどうしたら良いか、ということを私の経験からお話ししていこうと思います。その前に今日お話ししたことは「良いリードとは」について私が考えているとても大事なことなので一回分のテーマとしてお伝えしました。これから具体的なノウハウをお話ししていきますが、これらはあくまで私がリードを完成させていく中での方法であって、どのリードにも適応するというものではありません。数ある可能性のうちの一つとして試していただけたら、と思います。次回からは具体的なポイント、こういう場合はどうしたら良い、という形で一つずつお話ししていこうと思います。今日も最後まで読んでくださってありがとうございます。

Viel Spass und Freude am musizieren! 音楽に楽しみと喜びを★(2020年6月27日)

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