【大事なことば】⑥オーケストラの中で

ドイツのオーケストラで長年仕事をしてきたのですが、自分はとてもありがたいことに、初めた頃とても優秀な同僚に恵まれて本当にたくさんのことを学びました。毎日が必死で、けれど学ぶことは山のようにあり、それを忘れたくなくて、、、。できる限り日記に書きとめていたのでした。今も時々それらを開いています。自分の中でちゃんと実践できていること、まだまだだなあ、ということ色々あります。そんな「大事なことば」を皆さんにもお話ししようと思います。今日テーマです。

オーケストラの中で吹くということは。

オーケストラの中で吹くということは、一緒に吹くのではなく、個々を大事にして吹く、各自がいかにそのパート意味を各自のことばで吹くか。

指揮についていくのではなく、いつも前に、前に。走る(速くなる)ということではなく、いつもタクトぎりぎり手前のタイミングをどんどんつかまないと、息が届くのは予想以上に遅いのだから、前に、前に。

今吹いていても、次へ次へと響かせることを想像する。息はどんどん進んでいっている。そう想像すると流れるようなメロディラインができるはず。

いつも反応すること。敏感に反応すること。

その日の日記はこれで終わっていました。たくさんのことを言われて、よほど忘れたくなくて覚えている限りの言葉を書き殴った感じでした。その後、何年か過ぎてから、デトモルト・室内オーケストラの首席オーボエを長年吹いてきました。特に室内オーケストラのような小編成の団体ですと、一人ひとりがソリストのような感じになってきます。指揮者の教授はピアニストでもあるのでモーツァルトのピアノ協奏曲を指揮者なしで何度も演奏しました。そんな時、特に後ろの方に座る管楽器は想像よりもずいぶんと早めに、先に先に掴んでいく感じで演奏する必要がありました。オーケストラの元同僚に言われ続けたことを「こういうことなんだな」と感じたのでした。

これと比較して興味深い経験もしました。大学の合唱団と一緒のコンサートに参加したときのことです。プログラムの中に「モーツァルト・フルートとハープのための協奏曲」がありました。指揮者は合唱の教授でした。この教授は大学の合唱団を全国大会で何度も優勝に導いた大変優秀な方なのですが、協奏曲の時、管楽器セクションである私たちの吹くタイミングに関して、ソリストであるフルートの教授の見解と全く違っていたのです。合唱の教授は「管楽器が早すぎる」と言い、フルートの教授は「ガンガン来い、そのタイミングで!」という正反対のことを言われたのです。これはきっと演奏形態の違いがあるのかもしれません。合唱は全体がまとまって美しい響きを出すまでに、要するにアウフタクトにかける時間が長い、フワッとした瞬間が必要なのかなと思いました。少なくともその合唱の教授の場合は。そしてフルートの教授は性格もせっかちで喋り方もいつも焦っている感じでしたので、余計に二人の感覚の違いが現れたのかもしれません。おもしろいですね。ちなみに、本番は協奏曲のソリストであるフルートとハープの教授たちのやりたいように、「先に先に進んでいく」感じで演奏しました、苦笑。

今日はこの辺で。最後まで読んでくださってありがとうございます。

Viel Spass und Freude am musizieren! 音楽に楽しみと喜びを★

(2020年10月25日)

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