一歩、踏み出すとき

今日のお話は「私たちが舞台に一歩踏み出すとき」のお話です。

皆さんは何か本番前に「これは必ずやるよ」といった習慣はありますか?それによって逆に縛られるようでは本末転倒ですが、その習慣を続けることによって安心につながれば良いですよね。私には心がけて実践していることが3つあります。

まず、本番前というのは大なり小なり緊張するものです。それはもうセットで存在する仕方のないことで緊張しないという方がまれなのではないでしょうか。問題は「良い緊張か、悪循環になる緊張か」だと思います。

そしてそれを左右する大きな要素の一つに「深くゆっくりした呼吸ができているか」が挙げられるのです。これが1つ目です。緊張すると無意識のうちに呼吸が浅くなり体の支えもうわずってしまいがちです。そうなると周りの騒音、ガヤガヤした雰囲気も気になってきて集中しにくくなるものです。そんな時に「意識してゆっくりと落ち着いた深い呼吸をし続ける」事によって少し意識が落ち着いて自分の中に集中できるようになります。試してみてください。

2つ目です。愛知県立芸術大学の学生時代、実技試験の評価内容に「どんな表情で登場したか」といういわゆるステージパフォーマンスの項目がありました。こわばった表情、ニコニコした顔、泣きそうな顔、無表情…色々書かれていましたが、お客さんにとっては「堂々と朗らかな」表情が「あぁ、この人の演奏を聴きたい」と感じるものである事は言うまでもありませんよね。直前まで本人がどんな感情、状態であろうとも「舞台に出たらあなたは役者」だと意識するのはとても大事だと思うのです。ちなみに私は、ここでも「声楽家」の方を参考にしています。堂々と胸を張って顔を前に、少し上向き加減で客席を見渡して登場する、ガラコンサートの様子でもオペラの役で登場する様子でもなんでも構いません、声楽家の方々の堂々とした姿をお手本にしています。

少しお話はそれますが、、、ドイツにいた頃、私はよく道ゆく人たちを「ある視点」で観察していました。それは「顔をどのような角度に保って歩いているのか」です。まっすぐ前を見てさっそうと歩く人、荷物を背負って地面を見ながら重い足取りで歩く人、手ぶらなのにうつむいて頼りなさげに歩く人、何か鼻歌を歌いながら足取り軽く行く人、実にさまざまです。その歩みに「その人の感情」というのは反映されるのだな、と思いながら眺めていました。もちろん、その時その人にどんな事が起こっていたのか知るよしもありませんし、悲しいならそんな歩き方にもなる、元気がないならとぼとぼ歩く、これは自然のことなのですが、、、普通の時にも癖になっていてついうつむき加減で歩いていることってありませんか?道を歩く時、少しだけ意識してみてください。「少しうつむいた時と、少しだけ正面より上を向いた時と何か気分が変わりませんか?

3つ目です。小澤征爾さんは舞台袖から登場する直前に木の箱のようなものを数回ノックして出られますよね。それは自分がこれから舞台に上がるんだという時に自分自身にかける「習慣、おまじない、勇気づけ」のようなものなのかな、とみているのですが、この「舞台にどうやって一歩を踏み出すか」というのはとても大事だと思います。私も自分なりの習慣として次のことを毎回実践しています。それは「大きく深く息を吸って舞台に上がる最初の一歩を踏み出すと同時に大きく息を吐きながら出る」ということです。私の場合は左足を最初に踏み出すのですがその時に深く吸った息を思い切り息を吐きながら舞台に踏み出します。そうする事で何か安心して、ふうっと気持ちが落ち着いて「さあ、行こう」と思えるのです。

何かそういった自分なりの「パターン」というものがあれば、「さあ、これから楽しい音楽の時間ですよ」(←これは“のだめカンタービレ”の受け売りですが)と自分に一種のおまじないをかけて「音楽という世界」に入っていく「スイッチ」になるのかな、と考えています。参考になれば幸いです。今日はこの辺で。最後まで読んでくださってありがとうございます。

Viel Spass und Freude am musizieren!! 音楽に楽しみと喜びを★

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